
聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.5
このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。
うつ病で働けなくなった僕は、精神疾患の患者であります。患者として生活するうちに障害者手帳と障害年金の存在を知りました。障害者手帳をもらうことにより受けられる支援があるというのです。これは取得するべきか否か。これは「障害者になるかならないか」というところにも立たされたような感じがあります。
僕自身は「障害者」という言葉に抵抗はないのですが、人によりその言葉の受け取り方は様々です。僕自身はあまり偏見を持たれないようにコラムを書くときも「精神疾患」と「精神障害」を分けて使っています。「精神障害」や「障害者」は制度上利用すべき時に使っています。「障害者になんかなりたくない」という理由で、この障害者手帳や障害年金の制度を利用しない方もいらっしゃるでしょう。そう言った経緯から、最近では表記を「障がい者」「しょうがい者」など配慮されていることもあります。もともとの漢字は「障碍者」と表記されていたようです。
言葉に配慮していることは他にも見受けられることができ、以前「精神分裂病」と言われていたものが、現在「統合失調症」という名称になっていますし、「精神病院」を「精神科病院」と呼び名を変えていったことがあります。
精神疾患も英語圏では「mental disorder」つまり精神障害となります。ネット用語ではメンヘラなどとも言われていますね。では、「精神障害者」となると印象はどうでしょう。まだまだ偏見が多い世の中では、差別的に捉えてしまう方も多いでしょう。よく精神障害者と犯罪を結びつけてしまう人がいます。一時期、ニュースなどで「通院歴」などと報道されている時期もありました。しかし、一般刑法犯の検挙人数のうち精神障害者等の人数は1.6%です。(平成26年度犯罪白書より)日本における精神障害者は320万人(厚生労働省、平成23年患者調査)で、人口比は約2.6%ですから、そこに関係性はあまりありません。精神疾患と犯罪を結びつけるのはただの偏見です。むしろ、精神疾患の患者は不安が大きく、怯えている方も多いのです。
先ほど挙げていた障害者手帳(精神障害者保険福祉手帳)の取得者数は約69万5千人です。(厚生労働省「平成24年度衛生行政報告例 結果の概要」より(平成24年3月末現在))先ほどの320万人という数字は患者数ですので、手帳の所持率はまだまだという感じです。
僕はこの障害者手帳を取得しました。窓口は区役所の障害福祉課です。指定の書類と医者に診断書を書いてもらい、今は3級まであるうちの2級を所持しています。手帳は定期券よりもやや多いサイズで表紙には「障害者手帳」とだけ記してあり「精神」の文字はありません。写真のついた身分証明書です。この障害者手帳を持つことで得られたメリットをご紹介しましょう。
東京都新宿区に住む僕の一例です。
まず都営地下鉄、都営バスなどの都営交通を無料で使えるパスを受給できます。病院へ行ったり、気分転換するのに助かります。映画は1,000円で鑑賞できます(映画館による)。所得税や相続税の控除対象にもなります。NHK受信料の減免や、NTTなどの番号案内が無料にもなります。携帯電話の料金にも割引があります(プランにより併用不可)。美術館・博物館・動物園なども無料や安くなることもあります。新宿区に住む僕は月に4回区内の銭湯を無料で利用できます。私鉄やJR、飛行機は割引がまだできませんが、都内の民営バスは手帳提示で半額になります。私鉄やJR、飛行機も他の障害者同様割引が実現することを願っています。今年(2016年)4月、障害者差別解消法も施行されます。
障害者手帳を持っていても、自分自ら「私は障害者です」と名乗る必要はありません。必要な時にだけ提示すればいいだけです。それによって差別されることはありませんし、あってはなりません。手帳を持つことによるメリットはこれだけではありません。お住まいになっている都道府県市区町村により違いがあり、地域で独特の支援をしている場合がありますので、ぜひお住まいの役所の障害福祉課などへ問い合わせをしてみてください。僕はこの手帳取得により、生活の負担が減っています。
医療費の軽減策としては自立支援医療(精神通院医療)もありますので、こちら(https://www.c-notes.jp/articles/13)をご覧ください。
障害年金も生活する上で、重要な制度です。以下、国民年金機構のホームページより抜粋です。『国民年金に加入している間に初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にある間は障害基礎年金が支給されます。……中略……厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。また、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。』働けなくなった僕の生活には、障害者手帳、自立支援医療(精神通院医療)、障害年金が大きな支えとなっています。
申請には、指定の診断書など必要書類が必要ですが、2ヶ月に一回、受給できますので、生活の大きな支えになります。年金を収めているのが大前提にはなりますが、若者などの年金を納めていない方が受給できる場合があるので日本年金機構(http://www.nenkin.go.jp)にお問い合わせください。
また、精神疾患の方は疲れやすく、電車などでも座りたいときありますよね。東京都福祉保健局ではヘルプマークの普及を始めています。(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/helpmark.html)区役所や都営地下鉄の駅の窓口などでもらえますので、必要な方はご利用ください。僕はこのマークをカバンにつけています。
精神疾患と精神障害。とても深いテーマで、自分がどの立場になるか、悩む方もいるかと思いますが、偏見があれば取り払い、受けることができる支援や制度はフルに使いましょう。負担が減りますよ。
※ 記載内容は執筆当時のものです。
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