精神疾患と診断されたあと

Mental-health

聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.3

このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。

「うつ病」と診断された後、僕はどうしたか −−−−

 仕事をそのまま続けてしまったのです。これは失敗でした。最初に言っておきます、これは失敗でした。

 通院して服薬はしていたものの、仕事における環境は全く変わりませんでした。会社にも病気のことは報告しましたが、人を増やすなどの配慮はありませんでした。取引先も僕があまり休まれては困るという感じでした。当時にはリスクヘッジのような発想はなく、環境を変えることなく、仕事を続けてしまいました。

 処方された薬の副作用も強く、薬があれば眠れるのですが、起きた時はものすごく身体がだるく、シャキッと目覚めることはありませんでした。週末も夜中も仕事をする日もあり、うつ病を発症した原因を改善したわけではありませんでした。

 身体も限界を感じ、思い切ってドクターに「仕事を休んだほうがいいですか?」と聞いてみました。そうすると、「1週間とかでは、ダメですよ。休むなら、1〜3ヶ月休んでください。」と言われました。会社と交渉した結果、1ヶ月だけ休みをもらうことができました。しかし、ポケットベルを持たされて、連絡があれば、すぐ対応しなければいけない、条件付きでした。

 休み中、少しでも気を休めようと僕は好きな一眼レフを持って旅行に出かけました。温泉などにも行きました。景色のいいところでゆっくりすれば、少しは落ち着くだろうとの思いでした。

 しかし、期限の決まった休みを過ごすのは、あの激務の場所に戻るカウントダウンでしかありませんでした。またポケットベルが鳴るたび驚き、仕事のために電話をしなければならず、不快な思いをし、ゆっくり気を休めることはできませんでした。そして、あまり回復しないまま仕事に復帰することになってしまいました。

 それでは、僕はどうすればよかったでしょうか。

 まずは、会社にこのままでは病気が悪化してしまうので、しっかり環境改善を求めるべきでした。「黒川さんにしかお願いできない」という仕事はありがたいものの、その反面、僕の健康面に犠牲が出るというだけではなく、業務のリスク回避にはなっていませんでした。そして体制を整えた上で、ゆっくりポケットベルなども持たずに休むべきでした。2ヶ月くらいは休んでもよかったのかもしれません。

 仕事をされている方で、精神疾患を患った場合、まずは業務の改善をお願いしましょう。「そんなことをしたらクビになる!」と恐れずに会社の上司と相談をしましょう。最近は会社側もリスクヘッジを図るようになってきていることと、会社における「うつ病」などの発症へのある程度の理解も始まっているので、休職や時差出勤、業務の変更など対応をしてもらえる場合があります。業務における発症であれば、「傷病手当金」なども休職中は受けることができる場合もあります。まずはゆっくり休み、治療を続けながら、少しずつ復帰してくようにした方がいいと思います。

 職場に復帰した僕を待っていたのは、以前と全く変わらない状況でした。そして、再び激務が始まりました。そのまま状況が変わらないまま数ヶ月経ったところで、僕がやっていた業務は取引先との間に入っていた代理店がねをあげ、この業務から身を引く形になりました。時既に遅く、悪い体調だけが残りました。そのあとも他の仕事が入り、働いていました。その後、会社側が営業・マネジメント側に回って欲しいとの話がありましたが、これは僕の体調を考慮してのことではなく、逆にもっと仕事を廻して儲けて欲しいということでした。その時の僕はまだデザイナーとして仕事がしたかったため、その話を断ると、会社から独立する形になりました。今では考えられないことですが。。。

 ただ、勤務時間が自由になることや、業務量を調整できるようになること、家で仕事をできるようになることは、それは自分にとって少しいいことかた思っていました。ところがこれも失敗でした。ビジネスとプライベートの境界線が曖昧になり、リフレッシュが全くできなくなってしまいました。そして、昼食をとりながら仕事の資料を見ていた時、食事を戻してしまいました。

 ここが、自分にとって限界でした。これ以上、仕事を続けていくことは無理でした。仕事の取引先に連絡をし、業務ができない旨を伝え、医師にも当分は休むように言われ、休養に専念することにしました。このほかに選択肢はありませんでした。

 心と身体が悲鳴をあげていたのでしょう。初期の段階で、会社が適切な対応をしていてくれたならば、こんなことにはならなかったのでしょう。僕自身も、何か他の道を探っていれば、ここまで病気が悪化せずに入られたのでしょう。ただ、僕のように病気のど真ん中にいる場合、視野が狭くなり、余裕を持てなくなってしまい、選択肢が少なくなってしまいがちです。やはり周りの人が早く気づき、適切な改善や軌道修正を行う必要があります。

 周りの人に「おや?」と思う方がいれば、早めに気づいていただき、「大丈夫ですか?」と声をかけてみてください。ご自身が苦しい場合は、勇気がいるでしょうが、「助けてください!」と言いやすい人に早めに伝えましょう。解決策はきっとあります。

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