精神疾患になった日

Mental-health

聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.1

このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。

 僕はグラフィックデザイナーとして忙しくも、充実した日々を過ごしていました。28歳の頃です。ある雑誌広告の仕事を担当することになりました。毎月10数誌を扱う仕事です。コンセプトに基づき同じデザインを書く雑誌に展開していくのがよくある広告デザインの仕事のパターンです。ですが、この時は違いました。すべての雑誌において違うコンセプトで、それぞれのデザインで展開するやり方でした。その担当に置かれたのはコピーライターの女性とデザイナーの僕2人だけでした。そして、各誌にあったアイディアをそれぞれ出して、形にしていくのですが、話が進むにつれてクライアントのコンセプトが変わってしまうのです。その度にやり直しをして、印刷の締め切りまでそれを繰り返ししていました。とてもストレス度の高い仕事です。

 夜遅くまで仕事をして、終電では帰れず、会社に泊まったり、カプセルホテルに泊まったり、タクシーで帰宅したり。僕の生活時間軸はすっかり狂ってしまいました。当時はポケットベルの時代ですが、家に帰れてもピー・ピーとポケットベルが鳴り、僕は会社に呼び戻されていました。そのことがきっかけか、電話やポケットベルなどの電子音が苦手になりました。電話が鳴った途端に右手に発疹が走ることも。徐々に僕は体調を崩していきました。じわーっとした鈍い頭痛がまとわりつくようにあり、深い睡眠もできなくなりました。

 そんな身体の不調が何週間も続いて、市販の薬も効かなくなっていたので、かかりつけの内科と皮膚科に行きました。ですが、原因はわからなかったです。医者はふと「もしかしたら自律神経失調症かもしれませんね」と言いました。

僕は、症状がどんどん重くなる中、本屋で「自律神経失調症」を調べました。チェックシートなどの項目を見ると、物の見事に当てはまりました。そして調べているうちに出てきた言葉が、「うつ病」でした。僕は自分に起きている症状をなんとかしたいという気持ちと、原因不明で起きていることをはっきりさせたい気持ちで「メンタルクリニック」を受診することにしました。

 メンタルクリニックの場所は、家と会社の真ん中あたりにある交通の便がいいところにしました。仕事帰りに行ってみると、待合室には数人いましたが、雰囲気はほかの病院と変わりませんでした。問診票に今自分に起きている症状を書き、受付に出ししばらく待ち、診察室へ呼ばれました。問診票に書いたことを詳しく聞かれて、仕事のことや、生活のことを話しました。頭痛や発疹のことももちろんはなしました。そこでDr.に言われました。「うつ病ですね。仮面うつ病かもしれません。」こうして僕のうつ病の治療が始まりました。

 このように、うつ病などで受診する患者数は年間約100万人に及びます。(厚生労働省・患者調査)またメンタルの病気には統合失調症やパニック障害、不安障害、摂食障害、依存症などたくさんあります。これを含むと約270万人の方が受診しています。病院で受診をしていない方を含めると、もっとたくさんの方がメンタルの病気で苦しんでいることになります。4大疾患(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い患者数となり今、メンタルの病=精神疾患は5大疾病の一つとされています。精神疾患は、糖尿病や高血圧と同じく誰でもかかる可能性があります。2人に1人は過去1ヶ月間にストレスを感じていて、生涯を通じて5人に1人は精神疾患にかかるといわれています。(厚生労働省・こころのバリアフリー宣言より)自分だけではなく、友達、恋人、親、兄弟姉妹、子供、同僚、上司、部下など自分の近くの方が悩んでいる場合もあります。

 メンタルの病気はもはや特別なものではなく、とっても身近な病気です。そしてその始まりは頭痛が続く、体がだるい、なかなか眠れないなど、メンタルの病とは直接関係がなさそうな何気ない身体の不調であったりするのです。

 「自分がまさか精神病?」と受け止めづらいこともあるかもしれませんが、もし疑いのある不調が続くようであれば早く受診することをお勧めします。メンタルの病は早めに気づき、受診し、早期の段階で適切な治療を受けると、回復しやすいと言われています。また身近な方で「もしかしたら…」と思って気づいたら、受診を勧めてみてください。

 それではどこで受診すればいいでしょうか。「メンタルクリニック」「心療内科」「精神科病院」といろいろありますね。受診しやすい通いやすいところでいいと思います。内科的症状が強ければ、最初にかかりつけ医で受診して相談することをお勧めします。まずは自己判断で軽視せず、病院で受診することが大事です。

プロフィール黒川常治(くろかわじょうじ)1969年東京生まれ。グラフィックデザイナー、社会福祉法人巣立ち会・ピアスタッフ、ピアカウンセラー。株式会社DHC在籍時はロゴマーク、健康食品のパッケージデザインを担当。メンタルヘルスの啓発活動や講演活動も行う。

著書:「焦らない,諦めない.」(やどかり出版)https://book.yadokarinosato.org/items/5122358

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