2016年を振り返って

聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.25

このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。

このコラムがはじまって1年が経ちました。そこで2016年の出来事を、メンタルヘルスの切り口で振り返りたいと思います。

リオ オリンピック・パラリンピック

何と言っても2016年はオリンピック・パラリンピックイヤーでした。特にパラリンピックは今までにないくらいテレビのニュース番組で取り上げられました。障がい者の活躍で勇気や感動をもらった方も多いことでしょう。ただし、「精神障がい者」というカテゴリーは残念ながらありません。これには様々な意見があると思います。選手の中にもしかしたら精神疾患と向き合っている方もいるかもしれません。僕はスポーツのメンタルトレーニングにも興味があります。

 メンタルヘルスの福祉の中では「フットサル」が全国的に拡がりがあり注目されています。Jリーグのチームの協力もあり、大会も行われています。2月には大阪・堺市で「第1回ソーシャルフットボール国際大会」がおこなわれ、日本代表が見事優勝しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのときに全国大会が東京でできたらいいと個人的に思っています。

 また「ソフトバレーボール」も各地で大会が行われています。僕も作業所に通っているとき、東京都の大会に参加して楽しんだ思い出があります。スポーツがメンタルヘルスにいい効果があると期待しています。

障害者差別解消法

2016年4月1日から障害者差別解消法が施行されました。障害を理由に公共機関や企業が差別があれば解消しなければならい、努めなければならないという法律です。それだけ、社会には差別がたくさん潜んでいるという裏返しでもあります。しかしこの法の枠組みで改善されることが増えていくのはいいことです。まだまだこれから取り組みがはじまると言ったところでしょうか。法律についてはこちらをご覧ください。http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

相模原障害者殺傷事件

2016年7月26日、戦後最悪の殺人事件が起こりました。19人の命が奪われ、26人が重軽傷を負いました。それも抵抗できない「障害者」を意図的に狙ったという卑劣極まりない事件です。この事件には様々な問題が隠れています。そしてたくさんの人を悲しみだけでない救われない言葉にできない複雑な思いにさせました。この事件に触れて欲しくない、触れさせない、触れてはいけないという一面もありました。先ほどの社会には潜む「差別」にも繋がることでしょう。このコラムで特別寄稿というカタチで掲載いたしました。

また犯人が措置入院をしていたこともあって、メンタルヘルスの医療にも影響がありました。措置入院のあり方、精神疾患の方の人権なども話し合われ、せっかく前に進んだものを、この事件は何十年も前に逆戻りさせかねない事件でもありました。このことに触れることに辛い思いをする方、早く忘れたいという方もいらっしゃるかと思いますが、社会として向き合わなければいけないと思います。

デパスなど向精神薬指定に

精神疾患に処方されることの多い「デパス」、「アモバン」が向精神薬に指定されたのも2016年です。法律上の向精神薬とは「麻薬及び向精神薬取締法」で指定されたもので、処方などに制限があります。それは効果が感じられるが依存度や乱用が多く見られるためです。僕自身も普段からデパスが処方され、ある日の診察から処方される数が減りました。体感としても違いがあります。しかし依存度が高いということを考えると、そこから「デパス」がなくても過ごせる生活に少しずつフェードさせていかなければいけないのかなぁと思っています。

熊本地震、鳥取地震

2016年も大きい地震がありました。熊本地震は大きな揺れが何度かあり余震も続き、被害に遭われた方も多かったようです。その際も精神疾患を患っている人が被災したときのことと、被災した人に起こるメンタルヘルスについて、このコラムに書かさせていただきました。また関東・東北でも東日本大震災の余震とされる少し大きめの地震がありました。津波の心配など、3.11を思い出させるものでした。「震災うつ」に苦しむ方もいらっしゃいます。日本と地震は切り離せない関係ですから、震災の時のメンタルヘルスの知識も共有していくことが大事だと思います。

ポケモンGO

ゲームアプリで配信後、世界中の人を沸かせたのが「ポケモンGO」ですね。歩きスマホをする人が増えたようにも感じます。また引きこもりになっていた方が「ポケモンGO」をきっかけに外に出る機会が増えた事例も聞きました。人々を「動かせた」新しいものでした。運動するのが遠のいていた人にとって、いつの間にか歩いていた、という効果もあったように考えます。精神疾患になるとどうしても、カラダを動かすのが億劫になりがちです。このような新しいツールが今後も出てくることを期待しています。

一流企業の超過勤務・過酷労働

ブラック企業・ブラックバイト(アルバイト)についてはその問題が指摘されていましたが、第一線をいく一流企業のにおいて超過勤務・過酷労働が原因で自殺に追い込まれたことがニュースになりました。これにより企業の体質が見直されることとなりました。疲労が重なると健全な判断をとることができず、逃れるために悲劇を生むことがあります。また追い込まれて精神疾患を発症する場合があります。ビジネスとメンタルヘルス。これもこれから大事になるキーワードです。2015年12月にはストレスチェック制度が施行されました。

いじめやアウティング

いじめの問題も多くありました。避難した子供たちの取り巻く環境の深刻さは考えさせられました。また、大学生がセクシャリティをアウティングしなければならない状態になり、精神疾患を発症し自殺に追い込まれたこともニュースになりました。アウティングといえば年末に入りある俳優の違法薬物疑惑報道があり、その方が引退するまで追い込まれ、「知られたくないセクシャリティまで詮索されるのが怖い」というコメントが話題となりました。セクシャリティに限らず、知られたくないことを本人の意思とは別に告白せざるを得ない状況に追い込むのはハラスメントであり、本人にとっては地獄そのものです。学校や職場で、そのようなことが起きないようにする事もとても大切だと思います。

SNSとニュースメディア

そのような話題がSNSでいろんな方が意見する世の中になりました。テレビではSNSと連動する番組も増えています。またアプリなどのニュースメディアも増えてきています。そこで起こるのが「炎上」「ネットリンチ」です。心無い言葉も飛び交います。ニュースメディアもスキャンダラスな報道をこぞって取り上げたりします。この時、特定の人物が集中的に攻撃されることが起きています。これは「メディアリンチ」でしょうか。どこか「とことん堕とさないと気が済まない」風潮が伺われますが、これはとても危険な風潮だと思います。またニュースメディアによっては意図的に読者を不安や不快にさせる言葉遣いをしている場合も見受けられますので、お気をつけください。

医療サイトや情報源の信ぴょう性

年末に、医療サイトの記事や情報の信ぴょう性が疑われ、サイトが閉鎖され、運営する企業が謝罪する事態が起こりました。実はこの事を受け、この記事も2016年年末に掲載する予定だったのが、2017年1月掲載へと時間をいただきました。「治療ノート」や、このコラム「聞きたかったメンタルヘルスの話」にとっても他人事ではないからです。このコラムでは、僕が当事者の1人として少しでも「メンタルヘルス」の偏見や誤解を解き、早期治療につながり、また役立つ情報があればお伝えしたいという旨で書かせていただいております。読んでくださる皆様にとって少しでも有益であるよう心がけていますが、医療・治療という専門性を持った分野でもありますので、その情報には細心の注意を払わなければなりません。今後も皆さんのご意見ご感想をもとに読んで良かったと思える情報を発信できれるよう心がけていきたいと思います。2017年がみなさんにとって良い年になるよう祈っております。

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