聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.19
このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。
精神疾患になる可能性は、このコラムでもお伝えしている通り、誰にでもあります。人生の中で、精神疾患になるのは5人に1人と言われています。
ですが、悩みを抱えやすい環境などもあります。少しそこに触れてみたいと思います。
拘束時間の長い専門職
専門職にもいろいろあります。クリエイティブ系、福祉系、医療系、放送関係、学校関係…。どれも比較的拘束時間が長くなります。また休憩時間が取りにくい環境だと仕事に縛られっぱなしで、なかなかゆっくり休んだり、リフレッシュができません。そんな業務の中で悩みを抱えてしまうと、考え方も偏りがちです。セルフメンタルケアを大事にしましょう。
ハラスメントやブラック企業での勤務
職場には様々なハラスメントが存在します。セクハラ、パワハラ、マタハラなど。圧力をかけられ続けると、どんな健常な方でもまいってしまいます。被害者でいることはきつい苦痛が伴います。悩みから払拭されることも難しいので、会社のコンプライアンスに抵触していないか、相談できるところへ訴えて解決していきましょう。また近年ブラック企業のアルバイトや激務が問題化しています。疲れ切った後はもう精神疾患になっている可能性も高いです。退職なども視野に入れて、ココロと身体の健康を優先しましょう。
いじめ
学校や会社でも残念ながらいじめが生じます。最近はいじめ行為が陰湿にもなっているようです。些細ないじめも積み重なると心がそのことでいっぱいになり、味方が見えなくなり孤立してしまいます。いじめなんて受けていないと周囲に言ってしまう場合もあります。周りの人が早く異変に気付く必要があります。いじめは物理的に場所を変えるなどといったことが有効手段です。「逃げる」ことも大事な解決策であることを覚えておいてください。
マイノリティ(社会的少数派の人たち)
はじめに言っておきますが、マイノリティ=精神疾患ではありません。またマイノリティにも様々なものがあります。セクシャル・マイノリティをはじめ、人種、肌の色、少数民族、在日外国人、感染症(HIV患者やハンセン病患者)、無戸籍者、婚外子など。そのマイノリティと直接関係があるわけではありませんが、悩みや生きづらさの要因がそのマイノリティの要素に起因している場合、悩まなければいけない時間が長引くだけでなく、周りに相談しづらく孤立しやすい環境にあります。同じ仲間で集まって話をしたり、相談できる場所を確保しておきましょう。もちろんマジョリティであっても誰でも精神疾患になる可能性はあります。またマジョリティになる必要性もありません。
貧困と借金
低所得者の方は生活が制限されてしまうため、なかなか心豊かに過ごすことができません。貧困の中にいる子供は周りの同級生たちと同じような生活ができず、犯罪などに巻き込まれる可能性も増え、その後追い詰められ精神疾患を発症するケースがあります。経済的な支援があれば問題が解決したり、いろいろな支援を受けることができるのに、支援が行き届かない社会的構造がまだあります。また路上生活者の方にも何らかの精神疾患の方が約半数いるという調査結果もあります。借金苦で精神疾患になる方もいます。返済に追われて、解決策が見えなくなります。その場合は債務整理などの手段があるので国によって設立された「法テラス」http://www.houterasu.or.jp/index.html などに相談してみましょう。
ストーカー、DVの被害者
見知らぬ相手につきまとわれたり、好きな相手に暴力を振舞われたり、家族などから虐待を受け、精神疾患になる場合があります。DVは共依存されている場合も多く、第3者の介入が必要になります。しかし、その恐怖から逃れるには大変な時間と労力を必要とするため、専門的ケアと支援が必要になります。警察の力も借りましょう。
事件・事故の被害者
事件や事故に巻き込まれると、身体的負傷だけでなく、精神的苦痛にさいなまれます。事が大きいと後遺症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やフラッシュバックなどに苦しめられる事があります。失うものも多く回復するまでに時間がかかります。また被害者という立場から抜け出すにも多くの時間と支援が必要です。裁判などになった場合も問題と向き合わなくてはいけない時間が長くなり、精神的負担が危惧されます。
天災の被災者
最近は豪雨や台風の被害も増えています。地震もいつどこで起きるかわかりません。家や大事なものがなくなる喪失感と被害の状況が回復するのに時間がかかることは精神へのダメージは大きいです。避難生活もけしていい環境とは言えません。最近は天災の避難所にメンタルケアのチームが派遣されることもあるので、なんでも相談してみましょう。
年齢によるステージや人生で起こるもの
思春期、恋愛、就職、結婚、出産など人生で当たり前にあるところにも精神疾患は関係しています。更年期も精神の変化があります。失恋、死別などの悲しみは皆さんも想像がしやすいと思います。
それを避けるという考えではなく、どのように受け止めて前へ進むかを考えましょう。1人で抱え込まず、周りに相談しながら受け止めていくと負担が少なくて済みます。
このような様々な要因が、精神疾患のきっかけになってしまいます。他人事ではありません。また恥ずかしいことでもありません。こころにも受け止められる限界というものがそれぞれにあります。防ぐことは難しいです。大事なのは、偏見を持たず、健全な知識を持ち、自分や周囲に異変があったら早めに相談や医療とつながることです。
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