聞きたかったメンタルヘルスの話 vol.10
このコラムは筆者が以前某医療コラムで連載していた修正前の記事本文です。内容は作成当時のもので、現在は異なることもありますので、ご了承下さい。あくまでアーカイブとしてご覧ください。
今、死にたくなっている気持ちの人。消えてなくなっちゃいたいくらいツラい人。死ぬのをちょっと待ってください。今、すごくツラいですよね。でも、今あなたの脳は誤作動をしていて、本当は生きたいはずなのに、その気持ちが隠れちゃっています。必ず、解決策はあります。ツラさから脱出できる方法があります。すぐ助けを求めてください。近くに頼れる人がいなかったら、電話をしてください。
精神疾患と自殺・死をイメージする人も多いでしょう。特にうつ状態になると、希死念慮が出てきています。「自分は生きていても価値がない。」「自分が全部いけないんだ。」「このツラさから抜け出したい」など、自責の念や喪失感に心が占められて、そこから抜け出せずに、さらに衝動的な感情や力が合わさると最悪の事態を招いてしまうのです。
僕自身は、薬が変わった日に発作が起きて、「自殺しなければならない」という想念に支配され、救急車や支援者に助けを求めたことがあります。やはり、脳内伝達物質のセロトニンの不足などで、脳とココロと身体で誤作動が起きたようです。
日本は自殺大国です。内閣府の調べによると平成27年の自殺者数は2万4025人。原因がわかるもののうち、健康問題が動機の自殺が半数を占めています。そのうち4割が「うつ病」と関連していると思われます(警察省の調べ)。年齢では、40代50代60代が多いです。また厚生労働省の調べでは、20代30代の死因の1位は自殺です。また、東日本大震災に関係する自殺もまだ起きています。決して他人事ではないですね。
もし周囲に「死にたい」「消えてしまいたい」という人がいたら、その人の話に寄り添ってみてください。諭すのではなく、話を聞いてあげてください。そして、何か具体的な原因があるのであればその解決方法を一緒に探してあげてください。そこまで関われない場合は、その内容にあった相談機関を調べて教えてあげてください。
命を脅かす「精神疾患」のリスク。甘く見てはいけません。それを防ぐには、孤立させないこと、繋がること、治療をすることです。
今度は死とは逆の「生」の話をします。精神疾患になっても、やはり恋愛・結婚は深いテーマで、素敵なパートナーに寄り添っていてほしいものです。結婚した次に迎えるテーマが「出産」です。新しい家族を迎え入れるわけですが、精神疾患患者の方で「出産」を迷われていることをよく耳にします。それは遺伝するのではないか恐れているようです。東京都医学研究所によると、例えば知的障害の子が生まれる原因はDNAの突然変異だそうです。https://conbie.jp/article/5524 http://www.igakuken.or.jp/
また、同じ家族に複数人、精神疾患患者がいるのも遺伝というよりは、家風、気質、環境因子による影響が大きく関わっていると考えられますし、もはや心の病は誰がなってもおかしくない病気ですので(コラムの第1回でも触れております)、ひとくくりに遺伝と捉えない方が健全であると思えます。
また健常者同士の出産であっても、先天性の障がい児が生まれる可能性はあるのです。それだけ出産というものが大変なことなどだと思います。「障がい者が障がい者を生む」と心ないことを言う人がいます。でも、僕は親が障がい者ということで生まれた子供が障がい児だったという話は聞いたことがありません。「子供が欲しい」と思っている精神疾患の方は、心配があったら精神科医や産婦人科などで直接相談してみることをお勧めします。新たな家族が二人をさらに幸せにし、絆が深まることを望みます。
今度は「寿命」のお話です。僕がピア・スタッフをやっている期間だけでも、心疾患などで若くして突然お亡くなりになって、お見送りした方が10人前後いらっしゃいます。支援者や医療従事者の方で精神疾患の方で平均寿命より若くして亡くなる方が多いと肌で感じている方はいらっしゃるともいます。最近ヨーロッパで、精神疾患の方の平均余命が10~20年短いというデータが出てきました。ただ研究はまだまだでその原因は深く究明されていません。日本でもデータがなく、これからデータ収集・研究が始まるところです。
これは精神疾患の方の身体的健康をテーマにお話しさせていただいたこのコラムでも触れているHeAL JAPAN Initiative( http://healjapan.info/ )でもこの啓発を進めています。
僕を含む当事者は、今の現代の医療を甘んじて受け入れながら治療を続け、身体的健康にも配慮しながら暮らしていかなければいけません。他の病気を併発すると、身体のリスクが高まります。心の病だけでも負担なわけですから、当事者には大変ツラい問題です。でも、この問題は今まで軽視され過ぎていました。今後、精神疾患の方にいい食べ物や精神疾患の方でも気軽にできるいい運動など、研究が深まることを願うばかりです。
今回は「生と死」という重いテーマに触れてみました。自殺はやめてほしい、でも平均余命は短いかもしれないという板挟みのような構造になっており、書いている本人も戸惑っています。読んでいて気が重くなった方は、少しリフレッシュすることをお勧めします。このスマホやPCから一旦離れて、冷たいドリンクなど飲んでみてください。またこの連載コラムに関する、ご意見・ご感想・ご要望などもお待ちしております。
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